ボクシングのシーンは創作

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.231:
タンゴのレッスンが終わると、ボクシングシーンの撮影のために一人のスタントマンがロサンゼルスにやってきた。それは事実に基づく映画の中で最も重要なシーンだった*1。
Telperion訳:
タンゴのレッスンの後、ロサンゼルスのスタントマンがボクシングのレッスンのために上陸した。これはラッセルが本当の事実に基づいて想像した*、映画で最も重要なシーンに不可欠だった。
原本『Noureev』:
Après les cours de tango, un cascadeur de Los Angeles débarque pour des cours de boxe. C'est indispensable pour la scène la plus importante du filme, que Russel a imaginée d'après des faits authentiques*.

映画「ヴァレンティノ」の撮影のためにヌレエフが受けたレッスンについて。

事実と想像

この文に付いた注(訳本P.242)を読むと、次のことが分かる。

事実
ヴァレンティノが新聞記者に「女のようだ」と書かれ(「三日月クラシック」の記事より「P.242 彼は女性的な魅力溢れる~」の項を参照)、復讐を考えたが、実行前に急死した。
監督ケン・ラッセルによる創作
ヴァレンティノが新聞記者をボクシングと飲酒で打ち負かすが、無理がたたって死亡。

だからボクシングのシーンを「事実に基づくシーン」と呼ぶのは適切でない。原文には"a imaginée"(想像した)と書いてある。

映画の撮影場所

"de Los Angeles"はdébarque(上陸した)でなく直前の"un cascadeur"(スタントマン)を修飾している。だから「ロサンゼルスへの」という意味は不自然であり、「ロサンゼルスの」とか「ロサンゼルスからの」と解釈するべき。

それに原本には"il était environné d'accents anglais"(イギリス訛りに囲まれ)という記述があるので(「ロシア訛り、イタリア系アメリカ訛り、イギリス訛り」を参照)、撮影はイギリスで行われたことがうかがえる。

実際、伝記『Nureyev: His Life』(Diane Solway著)によると、撮影現場はスペインとイギリス。

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