フォンテーンの夫は嫉妬された側

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.157:
嫉妬深い夫テイト・アリアスがパナマで傷を負い、半身不随になってしまったのだ。
Telperion訳:
嫉妬した夫の手でパナマで負傷したティト・アリアスは、麻痺状態に陥った。
原本『Noureev』:
Blessé par un mari jaloux à Panamá, Tito Arias se retrouve paralysé.

1964年にマーゴ・フォンテーンの夫ティト・アリアスに起きた事件について。

嫉妬した夫とは事件の加害者

"blessé par"は英語の"wounded by"に当たる。つまり、blesséは動詞blesser(負傷させる)の過去分詞であり、前置詞parは受動態の動詞の動作主を示す。parに続く「嫉妬した夫」(un mari jaloux)は、ティトを負傷させた加害者。

原著者メイエ=スタブレ(Meyer-Stabley)は同じ段落に付けた注で、事件についてもう少し説明している。

原本『Noureev』:
Conclusion du donjuanisme de Tito Arias, un rival jaloux, Alfredo Jimenez, avait tiré sur lui.
『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.157:
女性好きの Tito Arias の迎えた結末は、嫉妬深いライヴァル Alfredo Jimenez の襲撃だった。
Telperion訳:
ティト・アリアスの女漁りの結果、嫉妬した恋敵アルフレード・ジメネツが彼に発砲した。

本文の「嫉妬した夫」と注記の「嫉妬した恋敵」は同一人物だと想像がつく。

麻痺の程度は半身だけとは限らない

原文にはティトは単にparalysé(麻痺した)とある。麻痺した部分が半身となっているのは、新倉真由美による付け足し。しかし伝記『Nureyev: His Life』(Diane Solway著)のペーパーバックP.309によると、ティトは負傷の結果"paralyzed from the neck down"(首から下が麻痺)とあり、全身不随といってよい。単に「麻痺した」と書いたメイエ=スタブレは間違っていないのに、新倉真由美が何となく原文にない言葉を追加して間違いにしてしまうのは、ノンフィクションの信憑性に傷を付ける行為ではなかろうか。

主な更新

2017/11/17
小見出しを付け、脚注をきちんと引用
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