ロイヤル・ヨットはアンティル号ではない

『バッキンガム宮殿の日常生活』P.191:
夫妻は足早に両親や贈り物や馬を後にし、ロイヤルヨット、アンティル号に向かった。
Telperion訳:
夫妻は両親、贈りもの、臣民や馬から速やかに離れ、王室ヨットに乗ってアンティル諸島に針路を取った。
原本『Buckingham Palace au temps d'Elisabeth II』:
Le couple quitta rapidement parents, cadeaux, sujets et chevaux pour cingler vers les Antilles à bord du yacht royal.

アン王女とマーク・フィリップスの結婚式後のこと。

アンティルはハネムーンの行き先

夫妻が向かった先である"les Antilles"が航海の目的地だということは、次の2点からだけでも分かる。

  1. 「向かう」に対応する原文の動詞はcinglerで、「(ある場所に向けて)航行する、針路を取る」。
  2. 原文最後の"à bord du yacht royal"は「王室のヨットに乗って」。

それにAntillesそのものも仏和辞書に「アンティル諸島」として載っている。

王室ヨットはブリタニア号

念のため、アン王女のハネムーン先がどこかに書いていないかと探したら、王室ヨット、ブリタニア号のWebサイトに英国王室カップル4組のハネムーン航海が載っているのが見つかった。アンとマーク・フィリップスのハネムーンの説明には、"Their cruise around Barbados and the Caribbean"(二人がバルバドスおよびカリブ海を一周りする航海)とある。アンティル諸島はカリブ海にあるので、実際に二人のハネムーン先らしい。

このブリタニア号、もうお役御免になったというのに、今なお単独のWebサイトがある。よほど重要な乗り物だったのだろう。今では観光スポットとして公開中らしく、日本語の説明文も無数に見つかる。

私は英国王室に関する知識をろくに持ち合わせていないので、新倉真由美の文に何の違和感もなかった。この文の誤訳に気づいたのは、少し前の部分の原文をチェックしたとき、たまたまここが目に入ったからに過ぎない。でも、もっと詳しい読者なら、「ロイヤルヨット、アンティル号」を読んで唖然とするかも知れない。

更新履歴

2017/11/20
ブリタニア号サイトのハネムーン説明ページのURLを更新
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