最初の絨毯と次の絨毯を中庭が隔てる

『バッキンガム宮殿の日常生活』P.42:
レッドカーペットは〈お手元金入口〉の扉から宮廷まで敷き詰められているため、かなり傷んでいる。
Telperion訳:
最初の赤絨毯はかなりすり減っている。君主手許金の階段から中庭まで延びているためだ。
原本『Buckingham Palace au temps d'Elisabeth II』:
Le premier tapis rouge est plutôt élimé, car il s'étend des marches de Privy Purse jusqu'à la cour.

謁見に呼ばれた訪問者が宮殿に入った直後の場所の描写。

courは宮廷でなく中庭

以前、記事「説明している出入口は門でなく戸口」と「中途半端に終わった拝謁シミュレーション」で、新倉真由美が中庭を指すcourを「宮廷」と訳すくせに触れた。ここで取り上げたのは、私の目に入った残りの1つ。

原文で赤絨毯にpremier(最初の)が付いているのは、中庭に着いた訪問者が中庭を通過するため。中庭には当然ながら絨毯は敷かれておらず、建物に戻るときに2番目の赤絨毯が始まる。このいきさつは、この部分の少し後の部分を取り上げた「中途半端に終わった拝謁シミュレーション」で説明してある。

courを「宮廷」と解釈すると、「最初の赤絨毯」をうまく説明できない。宮廷に入る前に赤絨毯が敷かれているなら、宮廷に入った後もずっと敷かれているだろう。だから2番目の赤絨毯が存在しなくなる。

新倉真由美の「courは宮廷」説を補強するpremierの省略

この部分での新倉真由美の文は、courを「宮廷」とした以外は、原文との差がそれほど大きくない。

  1. 「最初の(premier)」が抜けている
  2. 「段差(marches)」が「扉」になる

そのわりに私がここを気にしているのは、「最初のレッドカーペットは宮廷まで敷き詰められている」よりは「レッドカーペットは宮廷まで敷き詰められている」のほうがまだもっともらしく見えるから。「courは宮廷」説を維持するために意図的にpremierを訳さなかったのではないかと、つい勘ぐってしまう。もっとも、新倉真由美が分厚いこの本を訳すとき、そこまで細かく考える余裕はなかったろうとは思う。

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