公式のパーティにふさわしい色と本数の花

『バッキンガム宮殿の日常生活』P.56:
反対にバッキンガム宮殿の舞踏会の間用には、自身の温室で栽培した目に鮮やかな赤や黄色の花をふんだんに使うように命じ、天蓋が付き、金色の装飾のある王座のそばのトレイの上に置かれる。
Telperion訳:
その反対に、バッキンガムの舞踏会の間における公式の晩餐会用には、自分の温室で摘んだあふれんばかりの赤と黄のカーネーションの花束を求める。皿の金、椅子の鮮やかな紅、そして2つの王座の上に張り出す天蓋の真紅と金に、この花々はよく似合う。
原本『Buckingham Palace au temps d'Elisabeth II』:
En revanche, dans la salle de bal de Buckingham, pour un banquet officiel, elle demande une avalanche de gerbes d'œillets rouges et jaunes, cueillis dans ses propres serres, qui s'assortissent à l'or des assiettes, à l'incarnat des chaises et au pourpre et or du baldaquin surplombant les deux trônes.

宮殿で飾られる花の傾向を述べた文。直前には、女王が自分の客間ではユリやアイリスやカーネーションを好むと書かれている。ここでの引用と同じく、新倉真由美はカーネーションの名を出さなかったが。

構文解析

文末にある次の関係節は、カーネーションの花束(gerbes d'œillets)を修飾する。

qui s'assortissent à l'or des assiettes, à l'incarnat des chaises et au pourpre et or du baldaquin surplombant les deux trônes.

先頭の関係詞quiは、先行詞である花束が関係節の文の主語だということを表す。だからquiをカーネーションに置き換えて読めば、関係節が花束についてどう説明しているかが分かる。

この文の述語s'assortissentは、イディオム"s'assortir à ~(名詞句)"(~に似合う)の一部。àとそれに続く名詞句は3つある。

  1. à l'or des assiettes (皿の金に)
  2. à l'incarnat des chaises (椅子の鮮やかな紅に)
  3. au pourpre et or du baldaquin surplombant les deux trônes (2つの王座の上に張り出す天蓋の真紅と金に)

どれも部屋にあるものの色。そして述語が「似合う」なのだから、カーネーションと部屋の色の相性を述べていると分かる。

皿、椅子、天蓋の3つは、主語である花束に同じように結び付いている。それを押さえていれば、「トレイに置かれ」「天蓋のそばの」などとばらばらに扱うことはないはず。

花があまり多くなさそうな新倉真由美の文

原著者メイエ=スタブレ(Meyer-Stabley)の文と新倉真由美の文の違いのうち、私から見て一番困った結果は「トレイの上に置かれる」。なんだか、水盆に活けた花のよう。西洋でそういう活け方があるとしても、トレイにきれいに活けられる花の数はそれほど多くならないはず。トレイの場所が王座のそばに限定されていてはなおさら。

メイエ=スタブレは花の量の多さを"une avalanche de gerbes"(花束のなだれ)と表現している。数々の大きな花瓶でなければ収まりきらない量なのだろうと想像できる。椅子や皿との色合わせが話題になるのだから、数々のダイニングテーブルにも置かれているだろう。新倉真由美も「ふんだんに」と書いてはいるのだが、原文から推測できる花のほうがはるかに多い。

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