居住しない国でこそ亡命を申請できる

『ヌレエフ』P.97:
ジュネーヴ協定ではすべての外国人は居住する国における保護権を要求できる
Telperion訳:
ジュネーブ条約の規定によると、すべての外国人は滞在する国で保護の権利を申請できる
原本『Noureev』:
La convention de Genève prévoit que tout étranger peut demander le droit d'asile dans le pays où il se trouve,

フランスからソ連に送還されかかったヌレエフを救うために友人クララ・サンが思い出したと書かれたことのひとつ。クララはこの後、ヌレエフがフランスの警官に政治的保護を要求する手はずを整え、ヌレエフは亡命を果たすことになる。

「住む」と「いる」は違う

新倉真由美が「居住する」と訳した述語は"se trouve"。単に「いる、ある」という意味で、住んでいるという意味ではない。

亡命直前のヌレエフの場合、自分がいる国とはフランス。実際、ヌレエフはフランスに向けて政治的保護を要求した。この事例を頭に置くと、「外国人が自分のいる国で保護の権利を申請できる」は、「他国にいる人物はそこで自国の迫害からの保護を申請できる」と言い換えられると分かる。

迫害を受けつつ住む国で保護権申請は難しい

この時点のヌレエフが居住する国は、ソ連と言わざるを得ない。しかしヌレエフがソ連での保護権を要求しても、通る可能性はまったくない。国が自国領内の国民を迫害するのを止めさせるのはあまりに実現困難で、協定の条文に採用するのは無理なのではないか。

あるいは、「居住する国」は自国からの移住先を指すという解釈もできるかも知れない。でも、上の引用の後には「が、これは当事者がはっきりと声高にその援助を主張したときにのみ適応される」(新倉本より)と続く。外国に住むようになった人がそこでの保護をいちいち声に出して主張する必要はない。この描写は亡命の瞬間を想定しているのだから、ヌレエフを含め、移住先の決定は後回しな状況が多いだろう。

更新履歴

2017/11/14
原本での"La convention de Genève"とその訳語について述べた節を書き直し、記事「ヌレエフ亡命の根拠となった条約の呼び名」として独立させる
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