実在しないキーロフ市

『ヌレエフ』P.72:
特にキーロフ市内では他の地域以上にお互い監督し合うよう奨励されていた。ルドルフは格好な標的のひとりであり続けたのだ。
Telperion訳:
キーロフでは他の場所よりも、人々が互いに監視しあうように仕向ける体制だった。それゆえ、ルドルフは申し分ない標的になった。
原本『Noureev』:
Au Kirov encore plus qu'ailleurs, le système encourage les gens à se surveiller les uns les autres. Rudolf constitue donc une cible parfaite.

ヌレエフがキーロフ・バレエに所属していたころ、何かと反感を買いやすかったことについて。

訳本を読むだけで分かることだが、キーロフとはレニングラード市内のキーロフ劇場、または劇場付属のキーロフ・バレエ。ヌレエフの生涯を語る際にキーロフ市という場所は出てこない。「市内」という余計な言葉が印刷段階で入り込む(つまり誤植)よりは、原稿にすでに書いてあった可能性のほうが、私には高そうに思える。もっとも、いくらなんでも『Noureev』に目を通した新倉真由美が本気でキーロフを都市だと思い込むとは考えにくく、筆が滑ったほうがありえそう。

それでも、「こんなことを書いたのはいったい新倉真由美とMeyer-Stableyのどちらだよ」と思いたくはなるので、明記しておく。フランス語では都市名に定冠詞を付けないのが一般的。原文の"Au Kirov"は"À le Kirov"の縮約形なので、Kirovには定冠詞leが付いている。つまり、Meyer-StableyはKirovを都市名としては扱っていないことになる。

constituer(構成する)とcontinuer(続ける)

第2文は無害なケアレスミスと言ってもいいが、この記事の分量は少ないのでついでに書いておく。原文の述語である動詞constituerは「~となる、~を構成する」。「続ける」に相当するフランス語はcontinuer。

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