困難がない生き方と困難を無視しない生き方

『密なる時』P.58:
そうやってヌレエフは何事もおざなりにすることなく生活し、アスリートの人生には必要とされる、大きな困難も名声に執着する憂鬱もなかった。
プティ原本:
Vivre ainsi en ne négligeant rien, ni les grandes difficultés qu'exigeait sa vie d'athlète, ni l'ennui de cultiver sa gloire,
Telperion訳:
アスリートの生に不可欠な大きな困難も、栄光を育むことの倦怠も、何ごとも無視せずにこうして生き、

"Aを否定する文 ni B"は、Aを否定した後でBも否定するための構文。上の原文に当てはめるとこうなる。

A
rien(何も)
B
  • les grandes difficultés qu'exigeait sa vie d'athlète(彼のアスリートの人生に不可欠な大きな困難)
  • l'ennui de cultiver sa gloire(彼の栄光を育てることの倦怠)
Aを否定する文
en ne négligeant rien(何も無視せずに)
Bも否定する文
  • 彼のアスリートの人生に不可欠な大きな困難も無視せずに
  • 彼の栄光を育てることの倦怠も無視せずに

ヌレエフは困難さがない気楽な生活をしていたのではなく、困難にも倦怠にもきっちり対処し、乗り越えていたのだろう。実際、プティは「彼の人生に不可欠な困難」(difficultés qu'exigeait sa vie)と書いている。それに、膨大な練習を毎日欠かさなかったヌレエフには、「困難がない」より「困難から逃げない」のほうが似つかわしい。

2014/2/26
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