舞台では自分が一番

『ヌレエフ』P.162:
過小評価する人たちに対しては躊躇せず怒りをぶつけた。
Telperion訳:
自分を十分よく見せない者たちにはためらわず怒りを覚えた。
原本『Noureev』:
il ne se prive pas de s'emporter contre ceux qui ne le mettent pas assez en valeur.

ヌレエフの「自分が舞台に登場するときは注目を集めなければならない」という熱弁が引用されるすぐ前の文。

原文にある"mettre ~ en valuer"は「~を利用する、~をよく見せる」というイディオム。ここで「彼を十分利用しない者たちに怒りを覚えた」では意味をなさないので、「彼を十分よく見せない者たちに~」のほうが正しい。実際、後の熱弁に続けるには「よく引き立ててくれない」のほうが望ましい。

『密なる時』にもある同じ誤解

イディオム"mettre en valuer"はプティの『Temps Liés avec Noureev』で2個所見かけた。どちらも「よく見せる」の意味で使われている。一方新倉訳『ヌレエフとの密なる時』では、先に出たほう(記事「ヌレエフの公演を引き立てるための友人」)は「評価する」、後にでたほう(「『ヌレエフと仲間たち』プログラムの特徴」)は「利用し引き立てる」。どうやら新倉真由美はイディオム"mettre en valuer"を「評価する」という意味だと早合点しがちらしい。ただし『密なる時』2番目の個所では仏和辞書を調べた形跡があるが、さかのぼって1番目の個所を修正するには至らなかった模様。

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