伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

今残っている問題点

原本『Noureev』を手にした2011年6月下旬は、目を通す日は何かしら『ヌレエフ』の翻訳ミスが見つかったものでした。2012年6月にこのブログを開設した後も、取り上げたい個所をたくさん見つけています。しかし原本を買って2年になろうという今、記事にしやすく、積極的に記事にしたい個所はあらかた記事にしたようです。今残っている問題のうち、次の2種類の比率が最近はだいぶ高くなりました。

1. 翻訳ミスと断定しきれない
ここに分類される理由は「原文が難しく、構文解析が私には無理」と「新倉真由美の訳が原文からかけ離れているわけではなく、簡単には退けられない」の2つに分かれます。確定させて指摘記事にするのが理想とはいえ、いかんせん私は力不足です。
2. 明らかだが小さな翻訳ミス
この程度の間違いしか『ヌレエフ』や『密なる時』になかったなら平和だったのに、という印象のもの。一例を挙げます。
  • 『ヌレエフ』P.32の「賢者」は、原本のsauveur(救い主)をsage(賢人)だかsavoir(知る)だかと混同している。
  • 『ヌレエフ』P.221にある「スーツケースを占領していたマッサージ器具(少し書き換えている)」に相当する原文は"sa table de massage, (中略)qui se replie comme une valise"(スーツケースのように折り畳めるマッサージ台)。

私がブログを立ち上げたのは、ヌレエフのイメージを傷つけ、読者を混乱させる訳文が『ヌレエフ』に多すぎるからです。悪影響の少ないミスや解釈が確定できない個所も多く取り上げたせいで、「ブログ主が言うほどひどい翻訳ではない」という印象が生まれてしまっては不本意です。だから、確定できない個所はもちろん、小さなミスをすべて記事にするのは控えたほうがよさそうです。書籍の翻訳でノーミスというのは、実現困難だろうと思いますし。

ただし、新倉真由美の訳ではつじつまが合わないと確信している個所は、私に妥当な訳を出すのが無理でも、話題にしたいと思っています。「いったい原文はどうなっているんだ」と強く感じたので、原文を見た結果報告という感じでしょうか。

これら2種類の問題に該当せず、これから記事を書きたい個所はまだあります。ただ、「1930年代にハリウッドで戯曲化された『シンデレラ』」とか「マリインスキー劇場が後にワガノワ・アカデミーになった」とかいうほどとんでもない個所は多分もうないし、もともと神経質な私は自覚せずに小さい問題を取り上げそうです。だから「初期の指摘が埋もれたらどうしよう」という心配はやはりあります。

今のところ、対策として考えているのはお奨めリスト作りでしょうか。とりわけひどい個所の選別作業は、頭に血が上ってきそうで怖いのですが。しかし「三日月クラシック」やここで山ほど書いてきたことが多少はストレス発散になっているはずなので、今ならわりと冷静にできるかもという期待はあります。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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