伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

原本『Noureev』の固有名詞ミス

別記事で「Meyer-Stableyは人名をよく間違える」などと書いた手前、固有名詞のミスが実際には何回くらいなのか確かめたくなった。といっても、『Noureev』に出てくる膨大な人名をいちいちチェックはしていられないので、この記事は常に未完成であり、今後追加することもあるかも知れない。

過去触れたことがなかったミス

訳本ページ訳本原本妥当な英語表記
72ズーブローフスカヤIrina ZoublovskaïaInna Zubkovskaya
161エドワード・ヴィッテラEdward VitellaEdward Villella
263ジークフリード・フォリスZiegfield FolliesZiegfeld Follies

ヌレエフが入団した当時のキーロフのダンサー、インナ・ズブコフスカヤはフランス語表記が確立していそうにないので、正しいスペルとして英語表記を載せた。フランス語ではouを「ウ」と発音するので、Meyer-Stableyが最初の「ズ」をZouと書いているのはおかしくないと思う。しかしbの次がkでなくlなのは変だし、ファースト・ネームは同じ場所で列挙されているイリーナ・コルパコワとごちゃまぜになったらしい。

過去記事や『三日月クラシック』で触れたミス

訳本ページ訳本原本妥当なフランス語表記
57ガヤーネGaeneyGayane
156, 190ナディア・メリナ/メリーナNadia MerinaNadia Nerina
74イオチコ・ローラIochko-RolaIochkar-Ola
236アーヴィン・ウィンクラーIrvin WinklerIrwin Winkler

「三日月クラシック」ではナディア・ネリナについて断言しなかったが、訳本でカットされた部分でMeyer-Stableyが銀行家チャールズ・ゴードンをNadia Merinaの夫と呼んでいるのを後で見つけた。チャールズ・ゴードンの妻は間違いなくネリナ。

この他に、私は以下の名の原本表記も怪しんでいるが、本来キリル文字であるマイナーな人名は断定が難しく、一覧から外した。

感想

並べてみると、フランスでは馴染みが薄そうな名前ばかりで、間違えるのも無理はないかなと思う。ただ、一応バレエの記述が多い本なのに、ヌレエフと活躍した年代が重なるダンサーであるエドワード・ヴィレラやナディア・ネリナ、演目名のガヤネーで間違えていることが、私の「よく間違える本だな」という印象を強くしているのかも知れない。

訳本でのこれらの名の扱い

訳本『ヌレエフ』でこれらの名前のほとんどは、原本にのっとった表記になっている。なぜかズブコフスカヤは姓だけだが、原本があれなので、ファーストネームは省略してよかったと言ってもいいくらい。また、ガヤーネを正しく認識できたのは立派。ただし「ジークフリード・フォリス」は、原本のZiegfield Folliesを見間違っているらしい。ちなみに本来の日本語表記の一例はジーグフェルド・フォリーズ。

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

プロフィール

Telperion

Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

カテゴリ
タグ

マーゴ・フォンテーン エリック・ブルーン ノートルダム・ド・パリ パトリック・デュポン マリア・トールチーフ ミック・ジャガー 

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
全記事表示リンク

全ての記事を表示する