ヌレエフが性欲にかけるわずかな時間

『ヌレエフとの密なる時』P.29:
彼の性的欲望は、素早く巧みに満たされ、まるで手を洗うように淡白で衛生的であり、激情に身をやつすことはほとんどなかった。
Telperion訳:
こうして彼の性欲はてきぱきと完遂され、手を洗うように衛生的で、彼にとってはたぎるような人生のうちわずかな時間しかかからなかった。
原本『Temps Liés avec Noureev』:
Ainsi sa sexualité, accomplie vite fait bien fait, hygiénique comme on se lave les mains, ne lui prenait que peu de temps de sa vie bouillonnante.

目的語が時間のとき、動詞prendreは「(時間を)かける」という意味になる。ここで「時間」に当たる語句は"peu de temps de sa vie bouillonnante"(彼のたぎるような人生のわずかな時間)。さらに"ne A(動詞) que B"(BしかAでない)という構文を使うことで、ヌレエフがかける時間の少なさを強調している。この文ではあくまで時間を話題にしており、その際に激情があるかどうかには触れていない。

ローラン・プティは少し前(『ヌレエフとの密なる時』P.28)で、「ヌレエフ(原文ではRudolf)にはロマンチックな情熱に費やす時間はなかった」と書いている。ヌレエフにとって性欲を満たすのが感動を伴う行為でないらしいというのは、実際にプティの考えなのだろう。だからこのままでもプティの考えが大きく誤解されるわけではない。ただ、メイエ=スタブレ(Meyer-Stabley)が『Noureev』でこの文を一部パクっており、その部分を別の記事で取り上げたいので、出典となるこの文の対訳を用意しておきたかった。

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