伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

飛び続けるかのようなヌレエフの生き方

『密なる時』P.93:
彼の栄光は、彼の祖国から永久に亡命させて他の人々から引き離し、飛行機の中にたったひとりで閉じ込めたのだった。
プティ原本:
Sa gloire le tenait en exil permanent, éloigné des autres, seul, figé dans son envol.
Telperion訳:
彼は自らの栄光のせいで、常に故郷から離され、他者から遠ざかり、ただ一人、飛翔した姿で固まったままでい続けた。

envolは「飛び立つこと、飛翔」。飛行機のフランス語はavion。この文で「彼の栄光は彼を亡命させ他者から遠ざけ」などと書いてあるので、飛翔とはヌレエフの華々しい生きざまを指すのだろう。その比喩として「飛行機の中にいる」という言い方が一般的に受け入れやすいかどうか、私はとても疑問に思う。わざわざ原文にない「飛行機」という言葉を出さない方が、比喩としての「飛ぶ」という行為が分かりやすかったろう。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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