見せかけの陰にあるのは踊りに打ち込む姿だけ

『ヌレエフとの密なる時』P.30:
こうして表向きには成功や富、容易な征服を次々と積み上げていく陰で、あますところなく命を燃やしていたヌレエフは、彼の人生に土足で踏み込んでくる情熱の奴隷になっていた。
Telperion訳:
こうして、成功、富、容易な征服を積み上げながら命を過剰に燃やす人間という表面的な見かけの下で、ルドルフは自分の人生に侵入する情熱の奴隷だった。
原本『Temps Liés avec Noureev』P27-28:
Ainsi sous les aspects superficiels d'un homme qui brûle sa vie par les deux bouts, en amoncelant succès, fortune et conquêtes facile, Rudolf était esclave de la passion qui squattérisait sa vie.

情熱を感じさせる表現は2つある

関係節"qui brûle sa vie par les deux bouts"(命を過剰に燃やす)
引用部分の前には、ヌレエフが性的欲望を頻繁に満たす様子が書かれている。引用部分の先頭で「こうして」(ainsi)とあるので、引用部分は前の部分の影響を受けている。「命を過剰に燃やす」とは、その直前で書かれているヌレエフの性欲発散を指すと考えられる。ローラン・プティはヌレエフのそういう衝動を遠慮なく書いているが、ここ以外でも露骨な表現は避けている。
"la passion qui squattérisait sa vie"(彼の人生に侵入する情熱)
引用部分に続き、ヌレエフが踊りのために過酷な鍛錬をいとわないことが書かれている。引用部分の最後に出る「彼の人生に侵入する情熱」とは、踊りに対するヌレエフの情熱だと考えられる。

命を燃やすのもヌレエフの表面的な姿

関係節"qui brûle sa vie par les deux bouts"(命を過剰に燃やす)は、"sous les aspects superficiels d'un homme qui brûle sa vie par les deux bouts, en amoncelant succès, fortune et conquêtes facile,"(成功、富、容易な征服を積み上げながら命を過剰に燃やす人間の表面的な見かけの下で)という形で出てくる。つまり、命を過剰に燃やすのは、成功や富などを積み上げるのと同じく、ヌレエフの見せかけの姿である人間の行い。ローラン・プティにとって、表面的な姿の下に隠れているのは、"esclave de la passion qui squattérisait sa vie"(彼の人生に侵入する情熱の奴隷)で、これこそがヌレエフの本質。

命を燃やすのもヌレエフの本性とする新倉真由美

新倉真由美の訳文では、「命を過剰に燃やす」が表向きの姿に隠れていることになったため、「人生に土足で踏み込んでくる情熱の奴隷」と同格の扱いになっている。「情熱の奴隷になっていた」とは「命を燃やしていた」の言い換えだと解釈する余地すらある。たとえ両者が別のことを指すと分かったとしても、片方は表面的な側面、もう片方は隠れた本質だという明確な区別はできない。

主な更新

2017/12/13
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