根拠薄弱と思われるイヴ・サンローランとの恋愛

『ヌレエフ』P.182:
そしてデザイナー界の第一人者イヴ・サンローランがいた。
Meyer-Stabley原本:
et, si l'on en croit l'une des biographes du couturier, Yves Saint Laurent.
Telperion訳:
そして、かのデザイナーの伝記作家の1人を信じるなら、イヴ・サンローランである。

ヌレエフと恋愛関係にあった有名人としてMeyer-Stableyがいくつかの名前を挙げた後、最後にもってきたのがこれ。

前置きの内容

イヴ・サンローランの名を出す前に、「そのことについてデザイナーの伝記作家の1人を信じるなら」(si l'on en croit l'une des biographes du couturier)という前置きがある。ここでいうデザイナー(couturier)は直前に定冠詞leが付いているので(couturierの直前のduは"de le"の略)、特定の一人のデザイナーを指す。この場合は言うまでもなく、直後に名が出るサンローラン。

biographeに「伝記作家」以外の意味は見当たらない。新倉真由美が「デザイナー界の第一人者」を原文のどこから連想したのかは、さっぱり想像がつかない。

名の出し方の慎重さ

サンローランの名にだけ付いているこの前置きは、「その伝記作家の間違いかもしれないが」という含みを持たせている。この前置きがある理由として、私に思い浮かんだのは次のようなもの。

  • この伝記作家とは、直後に名が出るアリス・ローソン(Alice Rawsthorn)。彼女が著した伝記『Yves Saint Laurent』(原本には出版社や該当ページまで記載あり)が唯一の出典だから。
  • 原本が出版された2003年当時は存命だったサンローランやそのパートナー、ピエール・ベルジェから反撃される可能性をMeyer-Stableyが無視できなかったから。他の有名人は故人だったり異国人だったりするので、根拠薄弱だったとしても、リスクはきわめて少ない。

更新履歴

2014/1/21
小見出しや箇条書きの導入、説明の追加
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