不発に終わった情事の裏付け探し

『ヌレエフとの密なる時』P.45:
数ヵ月後、私は同じホテルに行った。そして植え込みや茂みや囲い、草が生い茂ったところ、さもなければ車で周辺を囲まれている草むらなどを探してみた。
Telperion訳:
数ヵ月後、私は同じホテルに泊まり、植込み、もしかすると数本の低木、格子造り、少し茂った何かを探したが徒労だった。いやはや、何もない、車が曲がるときぐるりと周る小さなやぶ以外は。
原本『Temps Liés avec Noureev』:
Je suis quelques mois plus tard descendu au même hôtel, j'ai cherché vainement le bosquet, peut-être quelques arbustes, un treillage, quelque chose d'un peu touffu, eh bien rien, sinon un petit buisson autour duquel tournaient les automobiles.

ルドルフ・ヌレエフに「ホテルを出て、湖のそばの茂みで愛し合った」と打ち明けられたローラン・プティは、数か月後にその場所を探した。しかし結果は芳しくなかった。

  • 「探した」(j'ai cherché)の直後にいきなりvainement(無駄に、空しく)と書いてある。
  • 探した茂みと言えそうな場所を列挙した後で"eh bien rien"(いやはや、何もない)と重ねている。

唯一プティが見つけた茂みらしき場所は、sinon(~を除いて)の後に書かれたこれ。

un petit buisson autour duquel tournaient les automobiles
  • autour duquel"以降は関係節で、先行詞"un petit buisson"(小さな茂み)が次のような場所だと説明している。
    Les automobiles tournaient autour de un petit buisson. (自動車が小さな茂みの周りで方向を変える)
  • 述語の動詞tournerは、「回転する」「曲がる」などで、静止した状態を指す言葉ではなさそう。ここでは車の動作だから、「向きを変える、曲がる」だろう。

恐らくこの茂みは、車道の曲がり角またはカーブの内側に生えている。愛し合う場所としてはまったく不向き。

ヌレエフの話の信頼性の低さ

プティはこの後、「彼の話の信憑性を強く疑った」(『ヌレエフとの密なる時』より)。それらしそうな場所が全く見つからない状態では、「さてはでたらめ言ったな」くらい考えてもおかしくないだろう。

しかし新倉真由美の文では、プティの捜索が徒労だったということが書かれていない。曲がり角の内側の茂みも、駐車場の敷地内にある絶好の場所とも受け取れる。「そんな場所はないじゃないか、本当か?」が「ここかも知れないけれど、本当か?」になったわけで、プティの疑いがかなり薄れてしまった。

主な更新

2014/9/23
箇条書きを導入
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