第三者の感想がミック・ジャガー本人の告白に化ける

『ヌレエフ』P.180:
「それは魅惑的な瞬間だったよ。まるでカチンとスイッチが入ったみたいだった」
Meyer-Stabley原本:
Lors d'une de leurs sorties culturelles, Mick Jagger et Marianne se rendent dans les coulisses pour le rencontre. « Ce fut un instant fascinant, se rappelle un témoin, un déclic instantané s'est produit entre Noureev et Jagger. J'étais ennuyé pour Marianne, qui paraissait un peu à l'écart. »
Telperion訳:
ミック・ジャガーとマリアンヌは文化的な外出の1つで、舞台裏までヌレエフに会いに行った。目撃者は回想する。「うっとりする瞬間だった。ヌレエフとジャガーの間で瞬時に何かが作動したんだ。マリアンヌのために心配になったよ。少しばかり蚊帳の外に見えたからね」

ヌレエフの舞台にミック・ジャガーが感激した後のこと。出典は原本の参考文献一覧にあるジャガーの暴露本『Jagger Unauthorised』(Christopher Andersen著)で、邦訳本『ミック・ジャガーの真実』(小沢瑞穂訳)にも載っている。

次の理由から、引用された発言は新倉真由美の訳ではジャガーのものにしか読めない。

  1. 発言の説明である「目撃者は回想する」(se rappelle un témoin)が省かれた。
  2. 発言からジャガーやマリアンヌ・フェイスフルの名が消えた。このため、発言者がジャガーではありえないということが分からない。
  3. 発言の直前にジャガーがヌレエフを絶賛したさまが書いてある

不注意だけでここまでできるとは私には信じられない。匿名の誰かの感想が、本人の確かな告白にすり替わる。仮にマスコミや検察の人間がしたなら、職業生命を絶たれてもおかしくない。

なお、訳本では「舞台裏まで会いに行った」がないため、この「瞬間」が指しているのが、その前に舞台上のヌレエフをジャガーが初めて見たときを指しているとしか読めない。上の発言者書き換えに比べればささいなことだが。

更新履歴

2014/1/21
出典や感想などの大幅な追記
関連記事

コメント

非公開コメント