酷評が自己防衛だったとは限らない

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.52:
妨害する人びとを辛辣に酷評し、
Telperion訳:
彼は悪態をつき、手厳しい論評で周りの人をむっとさせていました。
原本『Noureev』:
Il jurait et avait des commentaires cinglants qui contrariaient les gens autour de lui.

ワガノワ時代のヌレエフを語るガブリエラ・コムレワ。

直訳は「彼は悪態をつき、周りの人々を不快にさせる手厳しい論評を持っていました」。関係節"qui contrariaient les gens autour de lui"(周りの人々を不快にさせる)の行為を行うのは、"des commentaires cinglants"(手厳しい論評)。

述語の動詞contrarierには「~を邪魔する」という意味もある。新倉真由美はこの訳語を採用したのだろう。しかし、人々(les gens)は述語の目的語なので、邪魔される側であり、邪魔する側ではない。だから「妨害する人びと」は正しくない。

新倉真由美の訳だと、ヌレエフに酷評された人々には、そうされる理由があったように見える。しかし原文では、単に口が悪いだけだった可能性を否定できない。

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