伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

容姿のタタール人らしさは親子で違う

『ヌレエフ』P.12:
ファリダには瓜二つに見えたが、子どもたちの顔立ちの特徴は夫から受け継がれた。頬骨が高く、目の間が広く、髪は黒い。
Meyer-Stabley原本:
Tout comme pour Farida, de nombreux traits physiques de son mari trahissent son ascendance : les pommettes hautes, les yeux écartés et les cheveux noirs.
Telperion訳:
ファリダに関してとまったく同じように、夫の身体的特徴の多くから先祖がうかがわれる。高い頬骨、間が離れた目、黒い髪。

タタール人であるヌレエフの両親の容姿について。

主文を主語と述部に分けるとこうなる。

  • 主語は"de nombreux traits physiques de son mari"(彼女の夫の多くの身体的特徴)
  • 述部は"trahissent son ascendance"(先祖を露呈する)

この部分に続いて書かれるように、夫婦ともいかにもタタール人の風貌だったということ。

コロンの用法の一つとして、「コロンの前で書いたことについて、コロンの後で説明する」というものがある。この原文の場合、コロンの前で書いた「容貌に先祖がうかがわれる」の具体例として、高い頬骨や黒い髪を列挙している。これらは両親そしてタタール人の特徴であり、必ずしも子どもたちの特徴とは限らない。事実、息子ルドルフの髪は黒くないことは、訳本P.61の家族写真からも分かる。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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