今ではAZTを大量投与しなくなった

『ヌレエフ』P.277
その当時AZTの大量服用はかなり危険でした。
Telperion訳
当時はAZTの服用量は非常に高く、かなり危険なことでした。
原本『Noureev』
À l'époque on utilisait des doses très élevées d'AZT, ce qui était assez dangereux.

ヌレエフが1988年ごろに要求した薬剤AZTについて、ヌレエフの死後に主治医カヌシが語る。

当時と今の違いは危険性でなく服用量

原文はコンマによって前半と後半に分けられる。前半の意味は「当時はAZTの非常に高い服用量が使用されていた」。コンマの後で前半の内容は"ce qui était assez dangereux"(かなり危険だったこと)と言い換えられる。これを読むと、「当時は大量だったということは、今では大量の服用量ではないのかな」という印象を持つ。

一方、新倉真由美の文では、「その当時」が修飾するのが「服用量が高い」でなく「かなり危険でした」になった。そのため、「当時は危険だったということは、今では安全になったのかな」という印象を与えている。冒頭を「その当時行われていた」とするだけでも、原文と同じにすることはできたのだが。

AZTの投与量の変遷

カヌシの発言から受ける印象「今ではAZTの大量投与はしない」と、新倉真由美の文から受ける印象「今ではAZTの大量服用は危険ではない」のどちらが正しいのか。答えは、エイズ予防財団のサイト「エイズ予防情報ネット」に掲載されている平成6年12月の指針「HIV感染症診療の手引き」に含まれる「HIV感染症の治療法」にある次の記載からうかがえる。

AZTの適応はAIDS及びARCで、投与量は当初、1,500~1,200mg/日(分6、4時間毎)とされたが、特にわが国での投与例では骨髄抑制、消化器症状などの副作用が強く、継続投与が困難であった。臨床試験の結果、日本では400mg/日が標準的投与量とされた。

この量では有効性が不変である一方、副作用は大幅に軽減された。

米国でも適正投与量に関する検討が進められ、600mg/日(分6)が適当とされた。

上でいう「当初」がまさに、ヌレエフがエイズと戦っていた1980年代。

なお、英語wikipediaでのAZTの記事にも、次の記載がある。

Today, side-effects are much less common with the use of lower doses of AZT. (Telperion訳: 今日では、AZTの投与量はより少なくなり、副作用が見られることははるかに少ない。)

更新履歴

2012/10/8
原文の文脈説明(第1段落)を追記。
2017/11/12
AZTの投与量の変遷を述べたページのURLを変更。
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