ロゼラ・ハイタワーに対して謙虚なヌレエフ

『ヌレエフ』P.115:
既に国際的なスターでしたが、臆せず堂々と私の特徴的なテクニックを吸収していきました。自分のスタイルを改善していこうと努めていたのだのでしょう(原文ママ)。
Meyer-Stabley原本:
Elle, une vedette internationale, n'avait jamais honte d'apprendre, d'assimiler certaines particularités de ma technique qu'elle estimait susceptible d'améliorer peut-être son propre style.
Telperion訳:
私のテクニックのうち、自分自身のスタイルを向上させることができそうだと見なしたある種の特徴を学び、吸収することを、国際的なスターである彼女が決して恥じなかった。

亡命後の初パートナーの1人となったロゼラ・ハイタワーについて語るヌレエフ。

"avoir honte de ~"は「~を恥じる」。「臆する」が指す気後れとは違う感情。

  • 彼女は国際的なスター
  • 彼女は私のテクニックを学ぶのを恥じない

この2つを組み合わせると、「ハイタワーはすでに国際的なスターで、実績が足りない私から学ぶのを恥じても不思議はないのに、恥じずに学ぶ姿勢がある」というヌレエフの真意が見えてくる。亡命によりヌレエフの話題性がいかに高くても、当時のヌレエフはまだ西側ではフランスでしか踊っていないに等しく、対するハイタワーは諸国で活躍したベテラン。ヌレエフはそれを自覚していた。

引用文の後でヌレエフはハイタワーをさらに「自分の知識に無闇に執着しない」「常に改善方法を受け入れる」とほめる。この賛辞も「ハイタワーはすでに知識が豊富で改善にあくせくしなくてもすむはずなのに、なんという向上心!」と、ハイタワーの実績をほのめかしていると思う。

新倉真由美の文の不自然な点

「臆せず」とは普通、強者に対峙する弱者に対して使う言葉。このため、「ハイタワーが臆せず堂々とヌレエフのテクニックを吸収する」と言うには、「ヌレエフの前ではハイタワーなど小物に過ぎない」という前提が必要。だから、ハイタワーが強者であることに触れた「国際的なスターだが、臆せず堂々と」というのはいささか奇妙な表現。

2012/12/11
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