ベジャールはヌレエフに打診しなかったのか

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.260:
彼にとり二人のエトワール指名は寝耳に水だった。

ヴュ=アンとルグリのエトワール任命をめぐるヌレエフとベジャールの紛争の記述より。ところが、この文に相当する原文は、訳本に相当する場所にもその近くにも見当たらない。同じ段落に「エトワール任命を事前にヌレエフに打診したというのがベジャールの主張」と書かれているが、訳本でのみ、ベジャールの主張を嘘と断じていることになる。

訳本『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』での加筆は他にもあるにはある。しかしその多くは、章の中の小見出しや、「persona non grata」(P.75)や「オフショア」(P.192)といった語句の解説など、読みやすくするための試みと思われる(原著者メイエ=スタブレ(Meyer-Stabley)による段落区切りを無視して小見出しを挿入するのには賛成しないが、それはまた別の話)。『ヌレエフとの密なる時』からの引用が多くなった例はあるが、このために訳本の内容が変わったわけではない。今回の加筆はそれらと違い、補足説明の域を大きく越えている。

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