伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(ベルトラン・メイエ=スタブレ著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(ベルトラン・メイエ=スタブレ著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

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クラシック音楽以外にも聴きほれた幼い頃

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.20:ヌレエフにとって外の世界を知れたのはラジオだけだった。公人が亡くなると絶え間なく流れていたポピュラー音楽が中断され、ベートーベンやチャイコフスキーなどの曲が放送されたが、彼はそれに聴き入っていた。 Telperion訳:なぜならヌレエフにとって、もっと広い外界を表す唯一のものは家庭のラジオだったからだ。何時間でも耳を傾けていた。とりわけ幸せだったのは、公人が死去し...

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原著者は祈りを金より下に見ていない

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.16:金に値する価値があったのは、祈りの言葉でなくジャガイモだった。 Telperion訳:このじゃがいもは、祈りに値するとは言わないが、金に値するものだった。 原本『Noureev』:ces pommes de terre valent leur pesant d'or, pour ne pas dire leur pesant de prières. いつも空腹だった幼いヌレエフが、キリスト教徒の老婆がくれる食べ物欲しさに、自分の家の宗教でないキリスト教...

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第二次世界大戦前は順調に暮らしていた父

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.13:薄給だった父親は、スターリンが少数民族の軍幹部を更迭したため大尉から降格された。 Telperion訳:父(その俸給は雀の涙だった)は、戦後スターリンが軍から少数民族の幹部を全員更迭することを決意したとき、大尉の位から降格されることになる。しかしこの1938年、父にとってスターリンのソ連は神の摂理に思えた。 原本『Noureev』:Son père (dont la solde était misérable) sera ...

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ソ連の国力増大に伴う犠牲の大きさが無視される

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.13-14:しかし奇跡は起きなかった。一九二九年から四〇年間、農民の重労働により工業生産を四倍に伸ばしたソヴィエト連邦は、三八年には工業生産世界第三位の大国となった。 Telperion訳:しかしその時代に奇跡的なことは何もなかった。もちろん、1929年から1940年までの間に工業生産量が4倍になった結果、1938年のソビエト連邦は工業力が世界第3位になった。 しかしこの成長はとくに農村...

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ロシア革命は両親に実利をもたらした

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.13:結婚前父と母は畑仕事に励み一九二〇年代から共産党員になりました。その思想はとてもわかりやすかったからです。 Telperion訳:結婚前、父と母は単に畑で働いていた。1920年代からは、2人とも共産党員だった。よく分かる。2人にとって、革命は奇跡だったのだ。 原本『Noureev』:Avant leur mariage, mon père et ma mère avaient simplement travaillé dans les champs. Depuis les...

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父の姓はかつてヌリエフだった

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.20:父親の Hamet (Nouri の息子) と Farida はタタール人とロシア人の区別をしていなかった。 Telperion訳:父ハメット・ヌリエフ(「ヌリの息子」)、そしてファリダは、言いたいことをタタール語またはロシア語で区別なく話していた。 原本『Noureev』:Son père, Hamet Nouriev (« fils de Nouri »), et Farida s'exprimaient indifféremment en tartare ou en russe. 本来ファスリ...

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livre(本)とlibre(自由な)

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.22: 自由はほんの僅かしかなかったが、ファリダは子どもたちに時どきジュールベルヌ(原文ママ)の物語を聞かせてくれた。 Telperion訳:本はごく少なかったが、ファリダは時折子どもたちにジュール・ヴェルヌの物語を読み聞かせた。 原本『Noureev』:Les livres sont rares, et pourtant Farida lit parfois à ses enfants des récits de Jules Verne. ヌレエフの幼少時代、母ファリ...

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積み上がった雪のほうが水周りより印象的

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.16:洗面所や浴室などの簡素な衛生設備は凍りつき、ルディクは長くその幻影を見たという。村で唯一の道の両側には巨大な吹き溜まりができ、どんどん雪が積もっていった。冬の間中、雪かきしようとする者は誰ひとりいなかった。 Telperion訳:簡易式の衛生設備はしばしば凍りつき、ルディクは一つの情景をいつまでも覚えていた。雪が巨大な吹き溜まりとなり、村の唯一の通りの両側に積み上...

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父は下級兵士止まりではない

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.12: 砲兵隊に配属され、家族の運命はその異動にかかっていたが、結局下級兵士のままだった。 Telperion訳:砲兵大隊に配属され、開戦まで家族の運命は大隊の移動にかかることになる。が、彼は尉官のままだった。 原本『Noureev』:Il est attaché à un bataillon d'artillerie et, jusqu'à la déclaration de guerre, le sort de sa famille va dépendre des déplacements de son batail...

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父は昇進したが家族から遠かった

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.19:じきに大尉となるはずのハメットは家族にたくさんの手紙を送った Telperion訳:大尉に昇進したハメットは、たまに手紙を家族に送った。 原本『Noureev』:Hamet, promu capitaine, envoie de rares missives aux siens. 出征したヌレエフの父ハメットと妻子との交流について。 手紙の頻度は少ない rareの意味は「数少ない」「めったにない」など。この時期、父と子の結びつきは...

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