伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(ベルトラン・メイエ=スタブレ著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(ベルトラン・メイエ=スタブレ著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

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2つのスイートがあるのは東側では?

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2つのスイートがあるのは東側では?

前置き 以前、記事「ステート・ルームを住居と呼ぶことの是非」で次の文を引用したとき、「新倉真由美訳には言いたいことがあるので、別記事に書ければそうします」と書きました。でも残念ながら指摘記事としては完成させられませんでした。納得が行く記事を書けなくても、さんざん頭を絞った課題なので、書かないとすっきりしません。 取り上げる引用文 『バッキンガム宮殿の日常生活』P.52:西側の居住区域の一番奥には二間...

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ステート・ルームを住居と呼ぶことの是非

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バッキンガム宮殿の観光の見どころとしては衛兵交替が有名ですが、ステート・ルームもまた観光の目玉でしょう。王座の間、舞踏会の間、青の客間など、格式ある賓客を迎えるための広間の数々。インターネット上でも写真の数々を見ることができますが、その豪華さには目を奪われます。もちろん、『バッキンガム宮殿の日常生活』の原著者メイエ=スタブレ(Meyer-Stabley)も、ステート・ルームの部屋は力を入れて説明しています。 こ...

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グレン・テトリー振付「~ピエロ」

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ええと、『ヌレエフ』や『密なる時』とは何の関係もないし、私に糾弾の意志はないのですが、それでも口に出さないと落ち着かないもので。 今ごろになって、『バレリーナへの道』No.95のヌレエフ特集第2弾の話です。その中にある多くの談話のなかでも、佐々木三重子のはとりわけ面白いひとつでした。そこでヌレエフのドキュメンタリー「芸術と孤高のダンサー ルドルフ・ヌレエフ」について説明した中で、こんな一文が。 さらに、...

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未完のフーガはヌレエフの人生を象徴するのか

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先日は「フーガの技法」のContrapunctus 14自体について結構語ったので、今日はもう少しヌレエフを絡めます。 選曲者の心境 葬儀で演奏される曲を選んだのが誰か、Solway本やKavanagh本を丁寧に読めば見つかるのかも知れませんが、今のところ私は知りません。しかしヌレエフは自分の埋葬場所を手配しておいたのだし、葬儀で朗読された詩もニューヨークタイムズ紙の記事によると"reportedly chosen by Nureyev"(聞くところではヌ...

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葬儀で演奏された未完のフーガ

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1993年1月12日、ガルニエ宮でヌレエフの葬儀が執り行われたのでした。そこで21年後の今日は翻訳の話から離れ、葬儀で演奏されたバッハのフーガについて語りたくなりました。 私が語りたい曲は、バッハの死後に曲集「フーガの技法」の1曲として出版されました。この曲集は未完のため、曲の順番や呼び名は確定していません。問題の曲はContrapunctus 14と呼ばれることが多いので(contrapunctusは恐らく対位法を意味するラテン語)、...

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ダンサーが競馬騎手の体に憧れるとは

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一般常識に照らし合わせると訳文が奇妙に見える場合、私は原文をチェックするようにしています。今回取り上げるのは、『ヌレエフとの密なる時』訳本には数少ないそういう個所。もっとも、ヌレエフやバレエに関する予備知識と照らし合わせると奇妙に見える訳文は、この本にはいくつもありますが。 『ヌレエフとの密なる時』P.98:常に体重に対して強迫観念を持っており、競馬騎手の体型を理想としていた彼 原本『Temps Liés avec...

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ロシアの山を飛び越えたキーパーソン?

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『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.99にある、「ヌレエフは亡命時にフランス人の検査官に投げ飛ばされた」というくだりが、私にはどうにも無意味な動作に思えたということは、原本を買う前から「三日月クラシック」にコメントしたとおりです。その後「投げ飛ばされ」「放り投げられ」が誤訳だということは分かりました。しかし、やはりヌレエフが宙を飛んだように読める「キーパーソンは見事にロシアの山を飛び越え」の部...

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ヌレエフの家とフィリッポの家の位置関係

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『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.205:一九八〇年代以降ルドルフは、この島の一方に邸宅を持ち、もう一方には劇作家エドワルド・ド・フィリッポのヴィラが建てられていた。 Telperion訳:1980年代から、ルドルフはこの島に家を持つことになる。島はポジターノに面したナポリ湾の2つの岩礁の1つである(もう1つには劇作家エドゥアルド・デ・フィリッポの別荘がそびえていた)。 原本『Noureev』:À partir des années 1980, ...

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「ヴァレンティノ」におけるヌレエフのユーモア

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『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.240:極上のユーモア、露骨なときもあったが、時おり呟くように言っていた微妙な冗談。ケン・ラッセルも気づかなかったかもしれないが、非常に刺激的だった。 Telperion訳:高度なユーモアだ。時には明白で場面に即しており、時にはあまりに繊細なため、ケン・ラッセルとその意図からうまく逃れたのかもしれない。このことに我々は嬉しくなる。 原本『Noureev』:Un humour supérieur : p...

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デュポンの声明に辛辣さはあるのか

以前記事「パリ・オペラ座との関係は監督辞任直後は冷え気味」で、『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』の原著者メイエ=スタブレ(Meyer-Stabley)は当時のデュポンに「辛辣さがないわけではない」と書いていることを述べました。それなら、その直後に引用されるデュポンの声明には、その心情がにじみ出ているはずです。なのに訳本ではしごく穏当にヌレエフを立てているのが不自然なので、原文にあたったのですが、私の読解力で...

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