翻訳に由来する新倉本『ヌレエフ』の間違い - バレエ一般

前も書いたとおり、新倉真由美訳『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、原本と比べると以下の3つが数多くあります。 明らかに事実でないこと 非論理的な文 意図的と疑いたくなるほど異なるヌレエフ像 このうち3番目については、すでに主だった個所を「新倉本が招くヌレエフの誤解 - 一覧」でピックアップしました。今回は1番目の一部として、原著者のせいでない、バレエ関係の大きく間違った記述を挙げてみます。ただし...
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パリオペ監督が高い地位とは言っていない

『ヌレエフとの密なる時』P.88:オペラ座バレエ団の芸術監督は、だれかあるいは何かがその2つの椅子を外させる瞬間までは非常に高い地位だけれど、その時唐突に君は地面に放り出されてしまうのだよ」 Telperion訳:オペラ座バレエの監督は自分がとても安定していると信じているが、それもある日、何かが2つの椅子を離すまでのことで、すると不意に尻餅をついているのさ。 原本『Temps Liés avec Noureev』:Le directeur du ballet...
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プティは振付家としてヌレエフを従わせるつもり

『ヌレエフとの密なる時』P.23-24:私はこの年若いスーパースターに合わせ、彼の気に入りそうな振り付けをした。しばらく音楽を聴いた後で、私は彼に3回続けて繰り返し踊ることができるだろうかと尋ねた。 Telperion訳:私は若き怪物に、彼の気に入ったステップを合わせた。少しばかり音楽を聴いた後、私はそのステップを続けて3回繰り返すのがいいだろうと考えた。 原本『Temps Liés avec Noureev』:J'ai réglé au jeune monstre ...
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ロシアの山を飛び越えたキーパーソン?

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.99にある、「ヌレエフは亡命時にフランス人の検査官に投げ飛ばされた」というくだりが、私にはどうにも無意味な動作に思えたということは、原本を買う前から「三日月クラシック」にコメントしたとおりです。その後「投げ飛ばされ」「放り投げられ」が誤訳だということは分かりました。しかし、やはりヌレエフが宙を飛んだように読める「キーパーソンは見事にロシアの山を飛び越え」の部...
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ヒーローでも卑劣でもないタランティーノ

『ヌレエフとの密なる時』P.62:粗暴で偏狭で卑劣なヒーロー、タランティーノ(注9)にも似ていた。 Telperion訳:タランティーノの下劣な主人公たちのように、粗暴で偏狭だった。 原本『Temps Liés avec Noureev』:et tels les héros sordides de Tarantino, brutal et borné. ヌレエフを「モリエールの守銭奴のように倹約家、ユノのように忠実」などとたとえ続けた文の最後を締めくくる比喩。 タランティーノは新倉真由美の...
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映画「ヴァレンティノ」ラストのオレンジ

間違いとまでは言わないものの、原本と訳本の間にある差異に気づいたことが、この記事を書くきっかけとなりました。まずその部分を引用します。 『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』P.242:この映画の最後には、ヴァレンチノが決して手に入れられなかった穏やかな幸福の象徴としてオレンジが登場するが、彼のオレンジはなんだったのだろう? イタリアの恋人ヴァレンチノは、オレンジ畑を買って引退することを夢見ていたらし...
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狙った相手を魅了するヌレエフの手腕

『ヌレエフとの密なる時』P.18:際立っているところはひとつもないが、一度興味を抱くと、人々はひと目で虜になってしまう。その視線は、「あなたを好きになりそうなんだけど、仲良くしていけるかな?」とでも語っているようである。 Telperion訳:並外れたものは何もなく、それでいて彼から興味を持たれると、一目視線を浴びれば、物問いたげなその視線に征服されるのだ。「気に入りましたよ、分かり合えるでしょうか」と言ってく...
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近寄りがたい雰囲気

『ヌレエフとの密なる時』P.26-27:彼と出会った人々は、振り返ってみるものの、あえて近づいて見つめたり賛辞を浴びせたりすることはしなかった。このスーパースターは、映画好きな人々の間でよく知られている、スフィンクス(グレタ・ガルボのこと)のように虚ろな目をし、神秘的で尊大な雰囲気を醸し出していた。 Telperion訳:彼の通り道にいる人々は振り返った。そして、もっと近くで見たりサインを求めたりするために思い切って...
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笑いは二人の高揚を高めた

『ヌレエフとの密なる時』P.101:突然笑い声が私たちを遮り、 Telperion訳:不意に我々の中から笑いが沸き起こり、 原本『Temps Liés avec Noureev』:Soudain le rire vint nous envahir, 最終章、ヌレエフ亡き後にローラン・プティの夢とうつつのはざまでプティとヌレエフがひとつになって踊ったときのこと。 直訳は「不意に笑いが我々を満たしに来た」。envahirは「侵入する、いっぱいに広がる、満たす」などといった意味だ...
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命を得たのはプティが抱くヌレエフのイメージ

『ヌレエフとの密なる時』P.27:私の魂は彼によって稲妻に打たれたような衝撃を受け、それは私に確かな生気を与え、数々の思い出を眩いばかりに光り輝かせた。 Telperion訳:私の精神に強い印象を刻んだ閃光のようないくつかのイメージは、正確に命を宿し、私の思い出を輝かせる。 原本『Temps Liés avec Noureev』:Mon esprit est frappé par certaines images fulgurantes qui prennent vie avec précision et illuminent mes so...
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