伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

ロシア訛り、イタリア系アメリカ訛り、イギリス訛り

『ヌレエフ』P.234:
撮影が再開されイギリス英語に囲まれると、また元の状態に戻ってしまったのです!
Meyer-Stabley原本:
dès que les prises de vues recommençaient, il était environné d'accents anglais qu'il reproduisait alors sans s'en rendre compte !
Telperion訳:
撮影が再開した途端、彼はイギリス訛りに囲まれ、そのとき自分でも気づかずにその訛りを再現したのです!

映画「ヴァレンティノ」のため、イタリアからアメリカへの移民らしい訛りをヌレエフに指導した女優Marcella Markhamの述懐。

"accents anglais"(イギリスの訛り)を修飾する関係詞"il reproduisait alors sans s'en rendre compte"の意味は「彼が気づかずに当時再現した」。つまり、イギリス訛りに囲まれたヌレエフが、自分もイギリス訛りを話すようになってしまった。

ヌレエフ自身の英語がロシア訛りであることは、引用部分の少し前(訳本P.233)に書かれているし、訳本P.130やP.174やP.211にもある。ロシア訛りのヌレエフがイギリス訛りになることを「元の状態に戻った」とは呼べない。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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