伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

livre(本)とlibre(自由な)

『ヌレエフ』P.22:
自由はほんの僅かしかなかったが、ファリダは子どもたちに時どきジュールベルヌ(原文ママ)の物語を聞かせてくれた。
Meyer-Stabley原本:
Les livres sont rares, et pourtant Farida lit parfois à ses enfants des récits de Jules Verne.
Telperion訳:
本はごく少なかったが、ファリダは時折子どもたちにジュール・ヴェルヌの物語を読み聞かせた。

ヌレエフの幼少時代、母ファリダとの思い出。

livreの最も多い意味は「本」。「自由な」という意味の形容詞libreは存在するが、この文脈でlivreをlibreの誤植と疑うべき要素はない。

仮にlivresがlibresの誤植だったと仮定してみる。「自由」とは抽象的な概念なので不可算であり、複数形libresが存在するとは思えない。単数形と複数形が区別されるlibreは、「自由な人」といった意味になると思われる。前半は「自由な人々がほとんどいない」となるが、これは後半の読み聞かせと関係しそうにない。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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