伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

問題が多いコールドバレエへの対処法

『ヌレエフ』P.38:
だから外出するとき君に付き添わなければなりません。でも
Meyer-Stabley原本:
et alors que je devrais vous flanquer dehors,
Telperion訳:
君を叩き出すべきなようですが、

ウーファのバレエ団の端役で、問題行動が多かったらしいヌレエフに、上司が「君についての苦情がたくさん来ている」と告げた後にこう続けた。

"flanquer ~ dehors"は「~を叩き出す、クビにする」。事実、端役ダンサーが外出するとき付き添いをつける余裕は、地方の小バレエ団にはないだろう。1961年のキーロフ・バレエのパリ公演のときは、ヌレエフにKGBの監視が始終付いていたが、あの時はソ連の文化を宣伝するという国家的プロジェクトの最中だった。

なお、上司は本当にヌレエフを解雇する気はないので、語調を弱めるために動詞devoir(しなければならない)の時制が条件法現在になっている。(そしてこの後、上司はヌレエフを正規に雇うという、思い切った提案をする。)

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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