伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

サングラスとsingularise

『ヌレエフ』P.195:
ヌレエフはサングラスをかけ、先に店に入った友人たちに値段を尋ねさせた。
Meyer-Stabley原本:
Noureev se singularise en faisant parfois pénétrer avant lui dans la boutique l'un de ses amis pour demander les prix,
Telperion訳:
ヌレエフは時折、値段を聞くために自分より先に友人の1人を店内に行かせるという奇行で目立っていた。

自分が有名人なせいで店主に高値を要求されるのを嫌ったヌレエフの対策。

代名動詞"se singulariser"は「自分を奇抜さで目立たせる」。これが「サングラスをかけ」になったのは、singulariserから英語sunglassを連想したのだろう。ちなみにフランス語でサングラスは"lunettes de soleil"。

ヌレエフより先に店に入ったのは"un de ses amis"(彼の友人の1人)で、店ごとに1人ずつだったのだろう。この引用文の場合は、友人が1人でも5人でも大した違いはないが、次の例では、新倉真由美が単数形と複数形の違いに無頓着だったことが、大きな誤訳につながっている。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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