伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

巻き込まれるのはヌレエフでなくヴァレンティノ

『ヌレエフ』P.234:
しかし二番目の妻だった装飾家のナターシャ・ランボヴァ役の女優は、自分勝手な行動に彼を巻き込んだ。演じていたのはママス&パパスというグループの歌手ミシェル・フィリップスだった。
Meyer-Stabley原本:
Mais la décoratrice Natacha Rambova, la deuxième femme du bourreau des cœurs, qui l'entraînera dans ses folies d'enfant gâtée, est interprétée par Michelle Philips, ex-chanteuse du groupe Mamas et Papas.
Telperion訳:
しかし、レディ・キラーの2番目の妻で、甘やかされた子供の狂気に彼を巻き込む室内装飾家デザイナーのナターシャ・ランボヴァを演じるのは、ママス&パパスというグループの元歌手ミシェル・フィリップスだった。

映画「バレンティノ」の撮影でヌレエフとトラブルになった共演者について。

新倉真由美の文だと、ミシェル・フィリップスが自分勝手な行動にヌレエフを巻き込んだという意味になっている。ところが、関係節"qui l'entraînera dans ses folies d'enfant gâtée"(甘やかされた子供の狂気に彼を巻き込む)が修飾するのは、明確に関係節の前にある「室内装飾家デザイナーのナターシャ・ランボヴァ、レディ・キラーの2番目の妻」(la décoratrice Natacha Rambova, la deuxième femme du bourreau des cœurs)。ミシェル・フィリップスが言及されるのは関係節の後なので、関係節で描写されることはありえない。

ランボヴァに巻き込まれる「彼」とは、ランボヴァに関係する人間なのだから、夫だったルドルフ・ヴァレンティノ。ヌレエフではありえない。

更新履歴

2012/7/31
ランボヴァの職業を修正。調査不足でした。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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