伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

ドーヴェルベルとは振付家ドーベルヴァル

『ヌレエフ』P.266:
また“愛の魔術師アルルカン”や“ドーヴェルベル(原文ママ)のダンソマニー”などすっかり忘れ去られたフランスの遺産を掘り起こした。
Meyer-Stabley原本:
Il exhume aussi un patrimoine français des XVIIIe et XIXe siècles totalement oublié, avec Arlequin magicien par amour et la Dansomanie de Dauberval,
Telperion訳:
ドーベルヴァルの「愛の魔術師アルルカン」と「ダンス狂」で、すっかり忘れられた18世紀と19世紀のフランスの遺産を発掘した。

ヌレエフがパリ・オペラ座バレエの監督時代に上演した多数の作品の一部。

作品名はイタリック文字の部分だけなので、普通の字体の"de Dauberval"(ドーベルヴァルの)は作品名の一部ではない。振付家を指すと受け取るのが自然。実際、少し調べればドーベルヴァルという振付家が実在するのは分かるはず。ジャン・ドーベルヴァル(1742-1806)は「ラ・フィユ・マル・ガルデ」の作者として知られる。

Meyer-Stableyのミス - ドーベルヴァルは無関係

  • La Dansomanieの原振付はPierre Gardel。訳本巻末の「ヌレエフが招聘した振付家」リストはもともとルドルフ・ヌレエフ財団サイトのリストに基づくらしいが、そこでは振付Ivo Cremer(原文ママ)、原振付Gardell(原文ママ)となっている。
  • Arlequin, magicien par amourは単にIvo Cramér振付とされていることが多い。ヌレエフ財団サイトのページでは"Based on 18th, Century material"(18世紀の題材に基づく)とある。原振付がドーベルヴァルの可能性がゼロではないが、疑わしい。

なお、ヌレエフが招いた振付家リストの原本版では、2作品ともIvo Cramér振付とされている。

更新履歴

2012/7/26
「Meyer-Stableyのミス」を追記
2014/1/25
箇条書き導入を中心に書き換え
2017/8/3
ヌレエフ財団サイトのリンクを更新

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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