伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

魅せられたのはヌレエフでなくフォンテーン

『ヌレエフ』P.144:
手足を使うよりむしろ心を込めることを大切に踊っていたマーゴットには、彼女に魅せられたヌレエフが限りなく大胆に踊るのは、純粋にほとばしる恋心のために思えた。
Meyer-Stabley原本:
Pour Margot, qui danse autant avec son cœur qu'avec ses jambes, la fascination qu'il exerce sur elle et son inlassable dynamisme relèvent presque de l'alchimie amoureuse.
Telperion訳:
脚で踊るのと同じくらい心で踊るマーゴにとって、彼が彼女に及ぼす魅惑、その疲れを知らぬバイタリティは、ほとんど恋の錬金術の領域にあった。

「彼が彼女に及ぼす魅惑」は"la fascination qu'il exerce sur elle"の直訳で、"relever de ~"は「~の領域に属する、の支配下にある」。この文は、フォンテーンがヌレエフに魅せられる気持ちについて書いている。

"autant A que B"は「Bと同じくらいのA」。引用文でAに当たるのは"avec son cœur"(心を用いて)、Bに当たるのは"avec ses jambes"(脚を用いて)。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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