伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

モスクワは飛行機の出発地(2)

『ヌレエフ』P.74:
セルゲイエフは約束したが、モスクワ行きは飛行機ではなかった。
Meyer-Stabley原本:
Sergueev promet... mais à Moscou, pas d'avion !
Telperion訳:
セルゲイエフは約束した…なのにモスクワに飛行機がない!

ヌレエフが極北の地に派遣されるとき、モスクワからの飛行機移動を要求した。この文は実際のてんまつ。

"à ~(場所)"には「~に向かって」という意味も、「~において」という意味もある。だからここで引用した文だけでは、モスクワ行きかモスクワ発かは断定できない。しかしヌレエフはすでにモスクワからの飛行機移動を要求した後なので、その約束が反故にされたことを示すには、àは「~において」と解釈しなければならない。事実、ヌレエフはこの後で列車で24時間かけてヨシュカル・オラに行く破目になることが語られる。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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