伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

『バッキンガム宮殿の日常生活』原書購入

序文と第1章だけの照合の限界

私は以前「『バッキンガム』照合範囲の狭さによる思い残し」で、新倉真由美がまたしても誰かへの悪口を誇張したという疑念を書きました。そこを確認しようとしたら、後のほうの章をいくつも読まなければならないと分かっていても、その疑念を忘れ去ることはできませんでした。いくら私が英国王室に興味がないといっても、ヌレエフのようにおとしめられた実在の人物がまだいるなら、あまりに気の毒というもの。第1章の照合だけで、すでに新倉真由美の語学力のなさとやっつけ仕事は明らかですが、それだけでは『バッキンガム』の問題を十分に調べたと思えません。

原書到着とタイトル判明

こうして、ついに原書を注文しました。『Noureev』の3倍くらいの値段なので、仏アマゾンで中古を購入。10日後に届きました。

アマゾンでのタイトルは『La Vie Quotidienne à Buckingham Palace sous Élisabeth II』ですが、届いた本のタイトルは『Buckingham Palace Au Temps d'Élisabeth II』。新倉本で原書名が『Buckingham Palace Au Temps d'Élisabeth II』だという謎がやっと解けました。当初は長いタイトルだったのかも知れませんが、今後は原題を出す必要がある場合は短いタイトルを使います。

取り掛かりたい分野

こんなに長大な原書に『Noureev』や『Le Temps liés avec Noureev』のように目を通すのは、辞書を引かない簡易チェックでもまず無理です。一応日本語の新倉本すら、読みとおすのは大変です。ある程度、範囲を限る必要があります。

批判的な言葉

かつて『Noureev』との照合を始めたころ、「ヌレエフが悪く書かれている個所はすかさずチェック」は、とても効果的な絞り込み手段でした。今回も「誰かが不当に悪く書かれているのでは」と疑っている以上、批判的な文は確認します。原本でも同じ内容であることは恐らく多いでしょうが。やり玉にあがるのはもちろん王族でしょう。エリザベス女王はあちこちで書かれ過ぎて追跡困難ですが、親族の章がいくつかあります。宮殿の日常や財産などの章より優先することになるでしょう。

意味不明な文、ありえそうにない文

原書を注文してから届くまでの間、ちらちらと『バッキンガム』の他の章をのぞくと、「これは原文を読まなければ」と思う個所がわらわらと出てきました。かすかな違和感でも調べずにおくべきでないというのが、今まで新倉真由美の文を読んできた教訓ですから。興味のない章まで積極的に探しに行く気はまだありませんが、ページをめくっている最中に遭遇したら、どの分野だろうと放ってはおけないでしょう。

照合できない部分の存在

新倉本によると、『バッキンガム』には邦訳出版のためにMeyer-Stableyが新たに書き下ろした部分があるそうです。そうでしょうとも。邦訳本の表紙は邦訳出版と同じ2011年に挙式したウィリアム王子とキャサリン・ミドルトンだというのに、2002年出版の原書にミス・ミドルトンの名はありそうにないのですから。

加筆部分の新倉訳を読んで私が無性に原文を読みたくなっても、その願いはかないません。フラストレーションをためたくないので、加筆部分は読まずにすませたいものです。チャールズ皇太子の再婚とか、ウィリアム王子の結婚とか、2002年より後の出来事の記述には近づかないようにしなければ。

ヌレエフ本への思い残し

本当は、『バッキンガム宮殿の日常生活』にはあまり深入りしないべきだと思っていました。『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』や『ヌレエフとの密なる時』にも、まだ書きたいことは残っていますし、大きな誤訳をさらに見つけられればうれしいですから。

でも今の『バッキンガム』は、「私の論理に十分な説得力はあるだろうか」「取り上げるには細か過ぎるだろうか」と迷わずにすむ派手な個所がそこかしこに見つかります。ヌレエフ本2冊の原書購入当初が思い出されます。だから楽なほうについ流れてしまいます。でもいずれは一段落するでしょう。ヌレエフ本2冊と同様、『バッキンガム』にも私の手におえない個所はたくさんあるはずですから。

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Telperion

Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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