伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

ミシェル・ルノーが突き付けた要求

『ヌレエフ』P.256:
犠牲になった彼は自らバレエ団を指導していくと表明し、ルドルフの解任か追放を要求した。
Meyer-Stabley原本:
La victime annonce qu'elle va poursuivre la compagnie et demander la démission ou le renvoi de Rudolf.
Telperion訳:
被害者はバレエ団に対して訴訟を起こすこと、ルドルフの辞任または解雇を要求することを表明した。

パリ・オペラ座バレエの監督ヌレエフと教師ミシェル・ルノーがスタジオの使用時間を巡ってトラブルになり、ヌレエフがルノーを平手打ちした事件について。

poursuivreを仏和辞書で引くと、「~を追う」が最初にあり、後のほうに「訴える」がある。被害者ルノーは対決する気満々だし、後に賠償金を支払われるので(訳本P.271)、ここでのpoursuivreは「訴える」と見てよい。「指導する」という意味は仏和辞書で見当たらない。

démissionは「辞任」。辞任または解雇とはつまり、ヌレエフが自発的に監督を辞めるという穏便な形にするか、強硬にヌレエフを排除するかという選択肢。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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