伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

見取り図で防げる位置関係の間違い

『バッキンガム』P.53:
女王の侍女も庭園を臨む女王の私邸の真正面に、明るく広々とした寝室とゆったりした応接室のある住まいを持っている。
Meyer-Stabley原本:
La camériste de la reine dispose, elle aussi, d'un appartement personnel avec une salle de bains, une chambre à coucher vaste et claire et un salon spacieux. Il est juste au-dessus de l'appartemente privé de la reine et donne sur les jardins du palais.
Telperion訳:
女王の侍女も個人の住居を持っており、そこには浴室、広くて明るい寝室、ゆったりした客間がある。女王専用の住居の真上にあり、宮殿の庭園に面している。

住み込みの職員が泊まる部屋について述べた部分から。

"au-dessus de ~"は「~の上に」。侍女の住居は女王の住居の正面ではなく、上にある。

実際、新倉本P.38の宮殿2階見取り図、P.39の宮殿3階見取り図を見ると、3階の「女王の衣装係の部屋」が2階の「女王の寝室」の上にある。しかし2階の女王の区域の近くに侍女の部屋らしきものは見当たらない。

見取り図による確認の重要性

ちょっと熱心な読者なら、部屋が宮殿のどこにあるかを見取り図で確かめながら読むだろう。本文と見取り図のつじつまが合わないと、原文を知らない読者にも、原文または訳文に問題があることがすぐばれる。だから私は見取り図をとても気にしながら原文を読んでいるし、新倉本で疑わしい個所を見つける役にも立てている。

ここの前に取り上げた次の個所も、新倉本の本文が見取り図と合わない。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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