伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

『バッキンガム宮殿の日常生活』のチェック

『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の存在はずっと前から知っていましたが、原本と照合する気は長らく起きませんでした。理由はいくつもあります。

  1. バレエの専門家を自負していると思われる新倉真由美や文園社が本気で出版したがる題材に思えない。どうせ『ヌレエフ』出版の許可をもらいやすくするための抱き合わせに過ぎないのだろう。そんな邦訳本の出来など、初めから見当が付く。
  2. 著作例を見る限り、Meyer-Stableyは注目を集める芸能人の本を書くのをルーチンワークにしていると思う。邦訳の出来がどうであろうと、自分に印税が入るだけで満足するのではないか。
  3. 訳本がイギリス王室に無知丸出しだったとしても、私自身がやはり無知なのでなかなか気づけない。
  4. それに王室に思い入れもないので、その紹介本の出来をヌレエフ本のように真剣に案じられない。

でも、最近になって少し考えが変わりました。

  1. たとえ出版関係者が満足しても、読者はたまったものではない。かつて私が『ヌレエフ』を参考文献にしようとしたのに裏切られてがっかりしたことを思うと、わずかではあるが、他人ごとではないという気がする。
  2. 2冊のヌレエフ本からは、「新倉訳が間違いなのが明白」「原本と訳本のずれが大きい」の2点を満たす問題をこれ以上見つけるのは難しくなりつつある。記事を書くのに悩む必要がない誤訳を新たに『バッキンガム』から探すのは、簡単にできる気分転換になるかも知れない。

とはいえ、訳本の本文が348ページという厚い本を読むのは大変です。原書に金を出すのも私にはハードルが高く、どうせならAriane Dollfus著『Noureev: L'Insoumis』と格闘するほうがよほど楽しそうです。ところが、便利なものが見つかりました。『バッキンガム』に載っている原著のタイトルは『BUCKINGHAM PALACE AU TEMPS D'ÉLISABETH II』ですが、それと同じ2002年出版で、内容も同じと思われる『La Vie quotidienne à Buckingham Palace sous Elisabeth II 』が英アマゾンにあったのです。「LOOK INSIDE!」機能付きで!

ざっと見たところ、英アマゾンで公開されている原文は訳本にして約17ページ分。仏和辞書を引きまくる必要がある私にはこれでも手こずる量ですが、収穫を期待できる量でもあります。イギリス王室を知らない私が妥当な訳を提案できるかは自信がなく、記事に仕上げられる数には限りがありそうですが、ちょっとのぞいてみます。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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