伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

ジジが話しかけた相手はプティ

『密なる時』P.21:
やがて妻が現れ、「私が全部アレンジします」と代わりに言ってくれ、それを聞いて私は眠りについた。
プティ原本:
Ma femme est arrivée et a pris le relais, « j'arrange tout » me dit-elle, et je me suis endormi.
Telperion訳:
妻が来て交代し、私に「みんな手配するから」と言い、私は眠りに落ちた。

フォンテーンがプティに新作を依頼し、まだ病床にいるプティが即答できなかったときのこと。

妻ジジ・ジャンメールの言葉« j'arrange tout »の後にある"me dit-elle"は、"elle me dit"(彼女は私に言った)の倒置文。つまりこの言葉はジジがプティに向かって言ったもの。プティは衰弱しているとはいえ意識があり、自分でフォンテーンと話していた。ジジが代理となる前にプティに一言断るのは自然だと思う。

新倉真由美の「代わりに言ってくれ」では、ジジがプティの代わりにフォンテーンに向かって言ったとしか読めない。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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