伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

忍耐と献身はドゥース・フランソワだけの説明

『ヌレエフ』P.248:
ロンドンのモード・ゴスリング、ニューヨークのモニク・ヴァン・ヴーレン、トロントのリンダ・メイバーダク、サンフランシスコのジャネット・エスリッジ、そしてパリのドゥース・フランソワ。彼女たちはひたすら天使のように耐え献身的に尽くした。
Meyer-Stabley原本:
Maud Gosling à Londres, Monique Van Vooren à New York, Linda Maybarduk à Tronto, Jeanette Etheridge à San Francisco et enfin Douce François à Paris, qui fera preuve d'un dévouement total et d'une patience d'ange.
Telperion訳:
ロンドンのモード・ゴスリング、ニューヨークのモニク・ヴァン・ヴーレン、トロントのリンダ・メイバーダク、サンフランシスコのジャネット・エスリッジ、そして最後にパリのドゥース・フランソワ。彼女は心からの献身と天使の忍耐を発揮する。

ヌレエフの身辺の世話をしてくれる女性たちについて。

文末の関係詞"qui fera preuve d'un dévouement total et d'une patience d'ange"(心からの献身と天使の忍耐を発揮する)にある述語feraは、動詞faireの三人称単数形の活用形(ちなみに時制は直説法単純未来)。つまり、この関係詞が修飾する人物は一人。この場合は、列挙された人名のうち最後の一人であるドゥース・フランソワ。この文に続いて、ドゥースとヌレエフの関係が長めに書かれるのだが、「献身と忍耐を発揮する」はその前置きとなっている。

小さなミスではあるが、ヌレエフがこれらの女性をすべて振り回したとは限らないので、一応書いておく。なかでもモニク・ヴァン・ヴーレンは記事「モニク・ヴァン・ヴーレンがヌレエフに及ぼした影響」で触れているが、天使のように耐えるイメージではなさそうに思える。

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バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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