伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

誰の前でも暴言を吐いたとは限らない

『ヌレエフ』P.140:
彼はイギリス風の礼儀や丁寧さを無視し、汚い言葉を自在にあやつって何か気に入らないことがあるとののしり、誰の前でも“畜生”といった暴言を吐いた。
Meyer-Stabley原本:
Avec elle il n'est pas question de politesse anglaise. Rudolf, qui manie les gros mots avec aisance et jure dès que quelque chose lui déplaît, ne se prive pas de quelques shit devant la danseuse.
Telperion訳:
彼女との間でイギリス流の礼儀は問題外だった。下品な言葉をたやすくあやつり、気に入らないとすぐ悪態をつくルドルフは、この女性ダンサーの前で何回か「くそったれ」と言わずにはいられなかった。

ヌレエフとフォンテーンが初共演に備えてパートナーシップを築いていく際のこと。

"la danseuse"(女性ダンサー)は定冠詞laが付いているので、特定のダンサーを示す。この文脈で女性ダンサーといえば、明らかにフォンテーン。

原本にある次の記述を読む限り、ヌレエフは誰彼かまわず無礼なのではなく、上流階級の相手には礼儀正しくする気があったように見える。

  • ジャクリーン・ケネディとの間では完璧な振る舞い(新倉真由美の訳では違う内容。「三日月クラシック」の記事より「P.201 彼がその完璧な振舞いを~」の項を参照)
  • パーティ前に緊張していた(訳本ではP.202)

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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