伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

「失楽園」稽古再開に向けて

『密なる時』P.23:
活力がみなぎってきた。そして私は、マーゴと若き怪人ヌレエフが辛抱強く私を待っていたロンドンへと向かった。
プティ原本:
je recharge mes accus à son énergie infaillible, et me revoilà parti pour Londres où Margot et le jeune monstre m'attendaient impatiemment.
Telperion訳:
彼女の絶対確実なエネルギーによって充電し、マーゴと若き怪物がじりじりしながら待つロンドンに向けて発つところまでまた来た。

「失楽園」の初稽古の後で心身の調子を崩してフランスに帰国したプティがまた稽古に戻るまで。

プティを待つ2人の様子が原本と訳本で逆

impatiemmentはpatiemment(辛抱強く)の反対語。単語の見間違いは『密なる時』では珍しい。フォンテーンの旧友であるプティを急かさず待つのも、自分の都合で稽古を中断したプティを急かすのも、両方ありえそうだが、実際は後者。

プティはジジからエネルギーをもらった

"énergie infaillible"(確実なエネルギー)についている所有代名詞sonは、文脈によって「彼の、彼女の、その」のいずれかになる。引用文の前に、妻ジジのそばでプティが元気になったことが書いてあるので、ここでのsonは「彼女の」。プティはジジのエネルギーで力を取り戻したと書いているのだが、新倉真由美の訳では活力の源がジジだということが分からないと思う。ジジのおかげで復調したことはもう書いてあるので、絶対訳す必要があるというほどでもないが、念のため。

更新履歴

2016/5/11
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Telperion

Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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