伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

10倍違う署名数

『ヌレエフ』P.292:
一九七三年世界各国一万名以上の署名入りの嘆願書が作成されたが、なんの返答も得られなかった。
Meyer-Stabley原本:
Une pétition réunissant plus de cent mille signatures recueillies dans le monde entier sera rédigée en 1973 mais n'obtiendra aucune réponse.
Telperion訳:
世界中で集められた10万以上の署名をまとめた嘆願書が1973年に作成されるが、何の返答も得られないことになる。

ソ連に残った母とヌレエフの再会をソ連政府に認めてほしいという嘆願書について。

"cent mille"(10万)を1万と読み違えたという、ごく単純なミス。言われてみれば、集客力抜群だったこの時期のヌレエフのために世界中で集まった署名にしては、1万人は少ない。

署名数が1/10では、嘆願運動の規模がだいぶ落ちる。数値の間違いは語学の試験では取るに足りないミスとされるが、実地の翻訳では侮れない。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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