伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

FBIは通報される側の機関

『ヌレエフ』P.229-230:
七二年にはなんの根拠もなくFBIの監視官が別の通報を行った。
Meyer-Stabley原本:
Une autre alerte, sans aucun fondement, relancera la surveillance du FBI en 1972.
Telperion訳:
別な警報で原因で根拠もなく、FBIの監視は1972年に再開される。

FBIがヌレエフにソ連のスパイという疑惑をかけたことについて。

原文は「主語 + 述語 + 目的語」という単純な文に、"sans aucun fondement"(何の根拠もなく)が加わったのみ。

主語
Une autre alerte (別の警報)
述語
relancera(再開する)
目的語
la surveillance du FBI (FBIの監視)

「別の警報がFBIの監視を再開する」とは、この少し前に書かれたメモの通報と同じような外部からの警報が、監視再開の原因になったということだろう。FBIは通報を受け付ける機関であり、FBIから通報する機会は少なそうに思える。

更新履歴

2014/9/30
箇条書きを導入

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Telperion

Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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