伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

「白鳥の湖」をめぐる抗議と遅れの因果関係

『ヌレエフ』P.258:
リハーサルが二週間遅れたことへの抗議はありました。
Meyer-Stabley原本:
il y a eu des contestations qui ont retardé les répétitions de quinze jours.
Telperion訳:
抗議の結果、練習が15日2週間遅れました。

1984年にヌレエフ版「白鳥の湖」を上演したときのトラブルについて釈明するヌレエフの言葉。

直訳は「練習を15日2週間遅らせた抗議がありました」。練習の遅れは抗議の原因ではなく結果。

なぜ抗議があったのか

Meyer-Stableyはきちんと説明していないが、ヌレエフ版「白鳥の湖」は当初、ブルメイステル版に馴染んでいたパリ・オペラ座のダンサーたちの猛反発を受けた。ルドルフ・ヌレエフ財団サイトの「白鳥の湖」説明ページにはこうある。

for two weeks, they refused to rehearse a single step.

2週間、彼らは1ステップたりとも練習するのを拒否した。(Telperion訳)

このいきさつは他にもヌレエフの伝記『Nureyev: His Life』(Diane Solway著)や『Nureyev: The Life』(Julie Kavanagh著)など、あちこちで語られている。

更新履歴

2012/8/21
"quinze jours"の訳語を修正
2014/1/22
状況説明を追記

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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