伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

胸につけていた医療器具

『密なる時』P.91:
この付属物の内部には、2、3日ごとにネジを抜いて取り外す栓がついていて、そこから注射器で心臓を拡張する液体を注入していた。それは彼の生活のリズムを滅茶苦茶に狂わせていた。
プティ原本:
Au centre de cet appendice un bouchon que l'on dévisse tous les deux ou trois jours pour avec une seringue aspirer le liquide qui étouffe son cœur et paralyse le rythme de sa vie.
Telperion訳:
この付属物の中央にある栓は2、3日ごとに開けられた。心臓を圧迫し、生活リズムを麻痺させる液体を注射器で吸い出すためだ。

晩年のヌレエフが胸に打ち込んでいた医療器具について。

  • étoufferの意味は「窒息させる、押し殺す」などで、「拡張する」と訳すのは無理
  • 他動詞としてのaspirerは「吸う」であり、「注入する」の反対

この液体は、ヌレエフの胸部にたまり、心臓その他に害となる体液なのだろう。器具の用途は、その体液を集め、注射器で取り除けるようにすること。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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