伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

シンデレラは最初から美しい

『ヌレエフ』P.263:
汚らしい少女は登場から寂しげな子ではないと解釈しました。なぜなら彼女はいつの日か花開き、より美しくなると夢見ているからです。
Meyer-Stabley原本:
Pour moi, dès le début, la souillon n'est pas triste car elle vit dans ses rêves qui la subliment et la rendent plus belle.
Telperion訳:
私にとって最初から、汚らしい少女は哀れではありません。夢の中に生き、その夢によって昇華され、より美しくなっているからです。

エリザベット・プラテルが語るヌレエフ版のシンデレラ。"elle vit dans ses rêves qui la subliment et la rendent plus belle"の直訳は「彼女は彼女を昇華し、彼女をより美しくする夢の中で生きている」。「~という夢」なら"rêves que ~(節)"とか"rêves de ~(不定詞)"という形になりそうなものだが、ここでは関係代名詞quiが使われているため、夢そのものが彼女をより美しくするというのがポイント。夢が実現するかどうかと無関係に、夢見ているその時点のシンデレラがすでに美しさを増している。

ヌレエフ版「シンデレラ」を初演したギエムは、「かわいそうな境遇に見えない」と言われることもある。プラテルが演じたシンデレラもそうかも知れない。それは意図どおりとプラテルは言っているわけで、興味深い解釈だと思う。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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