伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

シャルロットとはチャップリン

『ヌレエフ』P.264:
シャルロットやテックス・アヴリーの映画
Meyer-Stabley原本:
des films de Charlot, de ceux de Tex Avery
Telperion訳:
チャップリンの映画、テックス・アヴェリーの映画

ヌレエフ振付「シンデレラ」に導入された現代的要素の一例として、エリザベット・プラテルが挙げたもの。

Charlotは男性名で、読みはシャルロ。私が愛用している『プログレッシブ仏和辞典第2版』(2008年発行)には、Charlotはチャップリンを指すことが載っている。どの仏和辞書にも載っているはずとは言い切れないが、インターネットの発達した今、Charlotの正体を突き止めるのはそう難しくない。『ヌレエフ』の発行は2010年なのだから、その前に下に挙げることのどれかはできただろうと思う。

  • フランス語wikipediaでCharlotを検索する。するとずばりCharlotの項が出て、チャーリー・チャップリンが演じた最も有名な登場人物(おなじみの山高帽やステッキの姿)だと説明されている。Charlotはフランス語でCharlesの愛称なのが由来だそう。英語ではこの役柄を"The Tramp(放浪者)"というらしい。
  • googleでCharlotを画像検索する。するとチャップリンの写真が山ほどヒットする。
  • 原文で「シャルロの映画」とあるので、フランスのアマゾンでDVD & Blu-rayカテゴリからCharlotを検索する。するとチャップリンの映画がたくさんヒットする。

ヌレエフ版「シンデレラ」にはハリウッドに憧れるシンデレラがチャップリンを真似るシーンがあるのは、このバレエを見れば誰でも思い当たると思う。しかしあのシーンを知っている人でも、「シャルロット」という表記からそれを連想するのは難しいと思う。

『密なる時』のシャルロット

『ヌレエフとの密なる時』P.96で、1992年にコミック・オペラで上演されたプティの作品として『私たちと踊るシャルロット』が触れられる。シャルロット役はルイジ・ボニーノ、つまり男性なので、もしやと思って調べてみた。プティの公式サイトは個別ページにリンクを貼りにくいが、この振付作品リストページに"1991 - CHARLOT DANSE AVEC NOUS"の項がある。そこをクリックすると詳細が見られるが、リストページですでに音楽としてC.Chaplinが挙げられている。やはりシャルロットとはチャップリンのこと。

もっとも、『密なる時』は2006年発行で、当時はプティ公式サイトがあったかも分からない。それに、『ヌレエフ』でチャップリンの言及が分からなくなるのに比べると、影響はごく少ない。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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