伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

mètre(韻律)とmaître(巨匠)

『ヌレエフ』P.271:
巨匠の音楽
Meyer-Stabley原本:
musiquette au mètre
Telperion訳:
リズミカルな安手の音楽

バレエ「ドン・キホーテ」についた注の一部で、「ドン・キホーテ」を含む19世紀に受けたある種のバレエの特徴の一つ。

ここで使われる単語の意味は次のとおり。

  • mètreは「メートル」「韻律」という2つの意味がある。「巨匠」に当たるフランス語はmaître。
  • musiquetteは「芸術的な価値がない音楽」。

音楽を指して「メートルがある」とは言わないだろうから、ここでの"au mètre"は「韻律を踏む」のほうだと思う。詩でなく音楽のことだから、私は拍子を取りやすいことだろうと思い、「リズミカルな」と意訳してみた。

「ドン・キホーテ」の作曲者ミンクスのバレエ音楽は、「バレエの伴奏には良いが、単独で聴くに堪える曲ではない」という評価らしい。音楽だけのCDとしてはほとんど売られていない。ミンクスがいくつもの有名なバレエに曲を付けたとはいえ、「ドン・キホーテ」の特徴として「巨匠の音楽」はなさそうに思える。原文のmusiquetteという言葉からも、そのことはうかがえる。

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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