伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

技巧があるダンサーを賢者と呼ぶか

『ヌレエフ』P.84:
まるで花火のように完璧な跳躍と回転をこなす賢者。
Meyer-Stabley原本:
Feu d'artifice, savantes perfections des élévations ou des girations.
Telperion訳:
花火、跳躍や旋回の巧みな申し分なさ。

パリでデビューしたヌレエフが受けた熱烈な賞賛の一つで、筆者はFrançois Guillot de Rode。

savantの意味は大きく分けると2つ。

  • 形容詞「博学な、学問の、巧みな」
  • 名詞「学者」

この場合はsavantesとなっていることから、形容詞だと分かる。語尾にesが付いているのは、複数形の女性名詞であるperfections(完璧さ)を修飾しているから。もしsavantがヌレエフを指す名詞なら、単数形になるのだからsavantのはず。

形容詞savantの意味のうち、「完璧さ」を修飾する言葉として意味をなすのは「巧みな」しかないだろう。

文法解釈を度外視しても、ダンサーの技巧を「賢者」という言葉でほめるのはなかなか見かけない表現。強い違和感を覚えるほどではないが。

2014/2/3
文法説明の簡略化

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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