伝記『ヌレエフ』の翻訳の検討

『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)と『ヌレエフとの密なる時』(ローラン・プティ著、新倉真由美訳、新風舎)の誤訳と改変。『バッキンガム宮殿の日常生活』(Bertrand Meyer-Stabley著、新倉真由美訳、文園社)の一部も対象

ヌレエフの海辺好きとサン・バルテルミーの家

『ヌレエフ』P.200:
だから彼は人生の最後に島を買い、サン・バーセレミーの家を遊蕩好きにふさわしく飾り立てていたのだ。
Meyer-Stabley原本:
On comprend mieux pourquoi il acheta une île à la fin de sa vie et comment sa maison de Saint-Barthélemy, au bord de l'eau, comblera ses goûts de sybarite.
Telperion訳:
なぜ彼が人生の最後に島を買ったのかや、サン・バルテルミーの水辺にある家のおかげで彼の遊蕩好みがどう満たされることになるのかが、一層よく分かる。

「ヌレエフは太陽と海が好きだった」に続く文。

分かりやすくするためにいくつかの修飾を無視すると、commentから文末までの間接疑問文は、「どのように彼の家(sa maison)が彼の好み(ses goûts)を満たすことになる(comblera)か」。家は飾り立てるなどの動作の対象ではなく、ヌレエフの好みを満足させる主体。カリブ海の小島であるサン・バルテルミーにある家は、その場所だけでヌレエフにとっては魅力的だった。

サン・バルテルミーの家については、ヌレエフの伝記『Nureyev: His Life』(Diane Solway著)や『Nureyev: The Life』(Julie Kavanagh著)でも書かれている。それを読む限り、サン・バルテルミーの家は、パリやニューヨークの家とは似ても似つかない簡素なものだったらしい。私の大ざっぱな訳で、いくつかの描写を列挙してみる。

  • ジャクリーン・オナシスは「ルドルフに招待されたら断りなさい」と知人にアドバイスした。(Solway本のペーパーバックP.523)
  • 絵画も彫像もハープシコードもない。(Kavanagh本のペーパーバックP.654)
  • ルドルフは家を調度品込みで買った。白アリに食われた見た目の悪いアップライト・ピアノから、イギリスの海岸の民宿にあるような、ビニールのクッションが付いた籐とベニヤ板の家具まで。(Kavanagh本のペーパーバックP.654-655)

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Author:Telperion
バレエへの関心が芽生えたのは2011年1月。その翌月に読んだ『ヌレエフ 20世紀バレエの神髄 光と影』は、そんな新参の私から見ても、間違いや意味不明な記述が多すぎました。その原因のほとんどが翻訳のひどさだと気づいたことからブログ開設を思い立ち、今は同じ訳者による邦訳本3冊を取り上げています。詳しくはこのブログでしたいこと 第3版をご覧ください。
フランス語の学習を始めたのは『ヌレエフ』に出会う少し前。まだまだ知識は浅く、至らぬところもあるでしょう。お気づきのことはぜひ知らせてください。リンクはご自由に。

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